有栖川有栖

2017年03月03日

【読了】「狩人の悪夢」有栖川有栖

有栖川有栖氏の作品は、優しい。
犯罪という穏やかではないものを扱っているのに、その優しさに毎回、何度も涙ぐんでしまいます。

「狩人の悪夢」も、そんな彼だからこその結末でした。

(ネタバレ無し)

狩人の悪夢
有栖川 有栖
KADOKAWA
2017-01-28



追い詰められた極限状態にあるからこそ発露する、愛情や憎悪、醜さと面白さを、有栖川氏は丁寧に、それはそれは大切に扱う。そこに優しさを感じるのです。

彼は人が好きなんだなあ、と毎回思います。人というものの儚さや強さが、小さな描写に散りばめられていて、読み手の心の奥底を揺さぶります。

事件をロジカルに暴いてゆく、一見冷徹な火村と、推理作家という立場からあらゆる可能性を提示し、間違うことで、火村を間違っていない道へ導く作中キャラクターの有栖川有栖のコンビは、生まれてなんと25年になるそうです。

あとがきは、彼らの物語を新たな視点から書いてみたいともあって、ファンとしてはまた楽しみが増えました。
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akikoyanagawa at 23:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年12月04日

中之島さんぽ〜「鍵のかかった男」(有栖川有栖著)を読んで

気になる場所には、自分の足で立たないといけない、と改めて感じました。
写真やビデオ、人からの話で街のことを「知って」いても、言葉の違いが生み出す空気の違い、ビルとビルの間に漂う時間の流れ、生活する人が当たり前に感じている動きは、私が意識を向けないと見つけられないもの。

仕事の用事があって、はじめて大阪に行ってきました。
用事の合間を塗って、中之島をひたすら散策。宿泊も中之島。

なぜそんなにも中之島かというと…
有栖川有栖著「鍵の掛かった男」を2ヶ月前に読んでいて、その作品で舞台になった場所だったのです。
作品そのものだけではなく、有栖川さんが文中に散りばめたこの街の描写ががあまりにも魅力的だったため、大阪に行くならきっと訪れよう、と思ったばかりでした。

鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)
有栖川 有栖
幻冬舎
2017-10-06



本を読み返して、登場したスポットをチェックし、実際に歩いてみると、案の定、私の頭の中に描いていた雰囲気と全然違っていました。
役所や公会堂、日銀の支店など、大きな建物が集まると聞いていたので、もっと冷たくモノの少ない、つるんとしたイメージだったのですが、巨大な建造物が多くて風通しは良いものの、その隙間隙間に古くからの垢のようなものが残っていて、あちこちから重ねた時間の長さと温もりを感じました。
いま「鍵の掛かった男」をもう一度読むと、きっと全然印象が変わるんだろうな。楽しみです。

中之島独特のそんな温もりを残しながら、新しいサービスも生まれていて、そのバランスが心地よかった。
図書館の中の北欧風カフェとか、アーティストによる中之島オリジナルグッズ展開とか、中之島を囲む川べりのお店からは、島を眺めながら食事ができるテラスとか。

大阪の中心地も気にはなるのですが、次訪れたらまた中之島に足を運んでしまいそうです。

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作品を読んだ方にはわかると思うスポットをいくつか。

一番行きたかった、中之島図書館。



ここのホール、吹き抜けが素晴らしいと聞いていたのですが、ほんとその通り。
観光スポットらしく、写真撮影のルールも明記してありました。

雰囲気が良くて、しばらくじっと佇んでいました。






お土産物屋さんにあった、近隣のアーティストさんによる、中之島をテーマにしたグッズ。続きを読む

akikoyanagawa at 19:25|PermalinkComments(0)