この本読みました

2020年05月05日

あまりに今と重なる。『リウーを待ちながら』

オススメされて読んで良かった。
朱戸アオ『リウーを待ちながら』。

日本のある街で、肺ペストが猛威を振るうという想像のお話。
感傷的になりすぎず、想定される医療現場、関わる人たちの行動が描かれています。

驚くのは、この作品で描かれた、ちょっとした油断がもたらす悲劇、無知による遠巻きの人たちの中傷や偏見・差別、無意味な争い、人情と現実の狭間での葛藤がそのまま、いま私達が現実に目にしていることとぴたりと重なること。

気持ちに余裕があるときに。
作中の登場人物たちが魅力的なのも、作品の価値を高くしている要因のひとつだと思います。
カルロス好き。










akikoyanagawa at 23:22|PermalinkComments(0)

2018年04月05日

【読了】「シスト」初瀬礼

初瀬礼さん「シスト」。
じっくり楽しむつもりだったのに、一晩で読み終えてしまいました。

「まさか自分の身近で起こるはずはない」という気持ちこそが、パンデミックを引き起こしてしまう恐怖。展開から目が離せず、気がつけば真夜中でした。

未だ続く紛争やテロ、若年性アルツハイマーという病気、既存マスメデイアの報道姿勢、インターネット上で不確定情報が瞬く間に広がるさま…
今の時代に起こりうる危機が冷静に描かれていて、その表現の温度の低さゆえに、すぐとなりにひやりとした闇が控えている感覚が妙にリアル。読んでいる間ずっと緊張していたような気がします。

私は普段、個々のキャラクターの内面性を掘り下げていくタイプの小説を好んで読んでいて、外で起きる出来事が主体で、そこに関わるキャラクターたち、という構図の作品は久しぶりでした。
出来事が作品の真ん中に置かれるから、必然的にキャラクターの登場量や描写が少なめになるよね、と読んでいる間は思ったのですが、本を閉じてからしばらくしても、それぞれどういう人間だったのかがイメージに残っていたことには驚きました。
良い悪いではくくれない、人それぞれの生々しい欲望と生き方。

中でもやはり、主人公であるフリーの女性ジャーナリストの像はくっきりとしていて、自ずと心が寄り添います。
渦に巻き込まれた彼女が、信じた方向に顔を上げて進んでいくさまは潔く、過度にヒロイン的デコレーションが成されていなくてとても良かった。

最後はちょっと駆け足で進み、「これから大変な騒ぎになってキツいんじゃないかな…」と、主人公楽観的な見通しに不安も感じましたが、でも彼女なら案外すっと乗り越えていくのかもしれません。

シスト
初瀬 礼
新潮社
2016-10-07



この本を読んだきっかけは、続きを読む

akikoyanagawa at 21:51|PermalinkComments(0)

2017年09月10日

いま改めて『龍の子太郎』

これは…すごい作品…!
今までなんで読まなかったんだろう。
『龍の子太郎』松谷みよ子著。

龍の子太郎 (講談社青い鳥文庫)
松谷 みよ子
講談社
1980-11-10



龍の子太郎の、成長と大冒険の物語。

テンポの良さにわくわくが止まらず、日本のむかしの伝承や風土、暮らし方に包まれる感じも気持ちよくて、一気に読んでしまいました。
日本らしくはあるものの、普遍的なテーマも含んでいて、ヨーロッパやロシアでも出版されたこと、頷けます。

慢性的な貧しさが産む人間の欲は、果たして罪なのか…考えてしまうなあ。
龍になったお母さんを探すため、続きを読む

akikoyanagawa at 21:00|PermalinkComments(0)

2017年03月03日

【読了】「狩人の悪夢」有栖川有栖

有栖川有栖氏の作品は、優しい。
犯罪という穏やかではないものを扱っているのに、その優しさに毎回、何度も涙ぐんでしまいます。

「狩人の悪夢」も、そんな彼だからこその結末でした。

(ネタバレ無し)

狩人の悪夢
有栖川 有栖
KADOKAWA
2017-01-28



追い詰められた極限状態にあるからこそ発露する、愛情や憎悪、醜さと面白さを、有栖川氏は丁寧に、それはそれは大切に扱う。そこに優しさを感じるのです。

彼は人が好きなんだなあ、と毎回思います。人というものの儚さや強さが、小さな描写に散りばめられていて、読み手の心の奥底を揺さぶります。

事件をロジカルに暴いてゆく、一見冷徹な火村と、推理作家という立場からあらゆる可能性を提示し、間違うことで、火村を間違っていない道へ導く作中キャラクターの有栖川有栖のコンビは、生まれてなんと25年になるそうです。

あとがきは、彼らの物語を新たな視点から書いてみたいともあって、ファンとしてはまた楽しみが増えました。
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2017年01月18日

【読了】「モノを探さない部屋づくり 無理して捨てないお片づけ」

「身の周りが片付かないのは、その人が悪いんじゃなく、自分に合ったモノの整理の方法を知らないから。それだけだよ。」

一昨年、ヒバリ舎・ミエさんのお片づけ講座に参加して、衝撃を受けた一言です。
【解明:片付けがうまくできない理由】(2014.11.17)
【お片づけセミナーその2、収納の基本】(2015.1.10)

【ヒバリ舎】

私は片付けができないダメ人間だ、と、忘れ物番長だった子供の頃から、ずーっとずっと自分に貼り付けていたラベルが、ぺろっと剥がれた瞬間でした。
なんだ、学べば良いのかと。

そのミエさんの教えてくださったことが、本になりました。
トライアルの頃にモニターとして講座に参加したり、体験談をほかのお客さんの前でお話したりと少しだけお手伝いしていたので、発売直後に送ってくださいました〜。ありがとうございます!





実際に、ミエさんの必要なもの・お気に入りのものだけに囲まれた部屋で、引き出しの中まで見せて貰いながら教わるのとは異なりますが、この本では要点が簡潔に、実例も含めてわかりやすく説明されています。

例えば、いつも出掛けるときに鍵を探しちゃうのは、決まった鍵の置き場所がないから。
置き場所があっても、そこが自分の帰宅後の動線上にはなかったり、仕舞うまでに扉を開けるとか、面倒な動作が必要だったりすると、「とりあえずここでいいや」と置き場所の意味がなくなってしまう。
美しい収納の仕方に自分を合わせるのではなく、自分がストレスなく自然にできる収納を考える。
まだ道半ばですが、その考え方で身の回りを整え始めたら、散らかりにくくなり、片付けも自然にできるようになりました。

ただし、この「自分がストレスなく」という部分が意外に難しく、続きを読む

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2016年12月04日

中之島さんぽ〜「鍵のかかった男」(有栖川有栖著)を読んで

気になる場所には、自分の足で立たないといけない、と改めて感じました。
写真やビデオ、人からの話で街のことを「知って」いても、言葉の違いが生み出す空気の違い、ビルとビルの間に漂う時間の流れ、生活する人が当たり前に感じている動きは、私が意識を向けないと見つけられないもの。

仕事の用事があって、はじめて大阪に行ってきました。
用事の合間を塗って、中之島をひたすら散策。宿泊も中之島。

なぜそんなにも中之島かというと…
有栖川有栖著「鍵の掛かった男」を2ヶ月前に読んでいて、その作品で舞台になった場所だったのです。
作品そのものだけではなく、有栖川さんが文中に散りばめたこの街の描写ががあまりにも魅力的だったため、大阪に行くならきっと訪れよう、と思ったばかりでした。

鍵の掛かった男 (幻冬舎文庫)
有栖川 有栖
幻冬舎
2017-10-06



本を読み返して、登場したスポットをチェックし、実際に歩いてみると、案の定、私の頭の中に描いていた雰囲気と全然違っていました。
役所や公会堂、日銀の支店など、大きな建物が集まると聞いていたので、もっと冷たくモノの少ない、つるんとしたイメージだったのですが、巨大な建造物が多くて風通しは良いものの、その隙間隙間に古くからの垢のようなものが残っていて、あちこちから重ねた時間の長さと温もりを感じました。
いま「鍵の掛かった男」をもう一度読むと、きっと全然印象が変わるんだろうな。楽しみです。

中之島独特のそんな温もりを残しながら、新しいサービスも生まれていて、そのバランスが心地よかった。
図書館の中の北欧風カフェとか、アーティストによる中之島オリジナルグッズ展開とか、中之島を囲む川べりのお店からは、島を眺めながら食事ができるテラスとか。

大阪の中心地も気にはなるのですが、次訪れたらまた中之島に足を運んでしまいそうです。

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作品を読んだ方にはわかると思うスポットをいくつか。

一番行きたかった、中之島図書館。



ここのホール、吹き抜けが素晴らしいと聞いていたのですが、ほんとその通り。
観光スポットらしく、写真撮影のルールも明記してありました。

雰囲気が良くて、しばらくじっと佇んでいました。






お土産物屋さんにあった、近隣のアーティストさんによる、中之島をテーマにしたグッズ。続きを読む

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2016年08月08日

目から鱗!「執事のダンドリ手帳」

執事のダンドリ手帳
新井直之
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
2012-11-29



手帳コミュニティで随分前に話題になってた本を今更読んでいますが、得るものがとても多い本!
複数のタスクを“完璧”にこなす執事業の筆者が、無理せず仕事を進めるコツを易しく教えてくれています。

言われてみれば、そりゃそうだ!ということばかり。実際自分もやっていることもありました。
たくさんのタスクが降っていた時に、まずするべきこと、そもそも基本的な自分の在り方が、最近ずっと言っている瞑想の会で学んでいることとぴたりと一致。
手法は違っても、自分をより幸せにするための根本はひとつであると、再認識もしました。

「完璧な仕事をする」の考え方は、特に目からウロコでした。
仕事に追われて効率悪いなあと思っている人にお薦めの一冊です。

※私はKindleで買いましたが、もちろん印刷された書籍としても出ています。
執事のダンドリ手帳 ~やるべきことがみるみる片づく
新井 直之
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
2012-11-13



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2016年07月20日

「エドワードとうま」ポップなイラストに夢中

姪っ子(4歳1ヶ月)用に買った絵本。
猛烈な馬好きの彼女のために、馬の絵本…と探していて見つけました。

エドワードとうま
アン・ランド
岩波書店
2015-09-16



馬が飼いたいエドワードは都会暮らし。
ある日ひょんなことで、都会に住む馬がいることを知って…?
絵本だけれど内容はなかなかシュール。エンディングに笑いました。

色遣いが可愛らしく華やかな挿絵が北欧のそれだなぁ、と思っていたら、案の定、挿絵を描いているオーレ・エクセルさんはスウェーデン出身。

調べてみると、みたことのあるイラストがちらほら。有名な目のイラストはココアのパッケージで、お土産に買ったことがあったもの。ああ、この人の絵だったのかあ。
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ガムラスタンとかスカンセンのイラストもありました。
ポストカードぎありそうなので、手に入らないか探してみます。

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馬好きな小さいお子さんが身近にいらっしゃる方へ(いるのかな…)。
そのほか、この馬の絵本もウケが良かったです。

ぱか ぱか (0.1.2.えほん)
福知 伸夫
福音館書店
2014-01-08




メリーゴーランドのちいさなうまタイニー [ 山本省三(児童文学) ]
メリーゴーランドのちいさなうまタイニー [ 山本省三(児童文学) ]


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